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金融システムの時間軸と人間の時間感覚の乖離 序論

 金融市場システムに参画しながら感じる人間の時間感覚と金融市場システムの時間軸には大きなズレがある。どういうことか、人間が感じる数年は金融システムにとってはいわば数秒に過ぎない。2007~2008年に起きたサブプライムローンの異常な増大に起因する金融恐慌は、2005年の時点で一部の賢明な識者にとってはそれが起きることは明らかであった。しかし、実際に金融恐慌が起きるまでには2年以上かかっている。2005~2006年、つまりバブル相場の早い段階でその崩壊に賭けた一見賢明な投資家は、大損害を被ったはずである。  現在の金融市場においても似たようなことが言える。特に株式市場は持続不可能な金融緩和によって支えられており、いわゆる2008年のリーマンショックとの共通点で言えば、その本質的価値よりも、緩和によるインフレ期待や、価格上昇するという価値に基づいて取引されていると言ってよい。  2007年当時のバブル相場の強さは凄まじく、多くのサブプライムローンの焦げ付きが大衆の目に明らかになり、その持続可能性の無さが周知の事実になった後もCDO(債務担保証券)の価格は上昇した。バブル相場では特定の金融商品の実質的価値に基づく取引ではなく、その価格が上昇していくという部分の価値によって取引されるためである。  現在の金融市場が恐慌に陥るというのは既定路線である。これは日本が非伝統的金融政策である量的金融緩和を始めて、海外がそれに追随した時から確定している。量的金融緩和の出口は金融商品の相対的価値の下落(金融商品価格上昇率<インフレ率)、もしくは金融恐慌でしかありえないからである。これは2018年~2019年に明らかであった情報から類推可能である、現に私が2019年に提出、発表した論文は金融市場の崩壊を示唆するものであった。2022年現在、米国株のPBR,PERの水準は明らかに異常値であり、本質的価値に基づく取引が行われていないのは賢明な投資家の多くが認めるところである。  そして、持続不可能性が周知の事実になってから実際にそこから予測される結果が現実になるまでは一定のタイムラグがある。金融システムにとってそれは当たり前で大したことではない。しかし人間にとってそのタイムラグは数年にも渡る。そしてそれはシステムがあまりにも不合理だとさえ感じさせる。  本文のファクトチェックも兼ねて、