現実主義へのシフト どんな思想も現実を変えない

 

1. 2020年以降に始まった「理想から現実」への転換

パンデミックを契機に、社会は「豊かさは無尽蔵」という暗黙の前提を失った。再生可能エネルギーやEV、移民受け入れといったリベラルな取り組みは、なお重要であるものの、以前のような楽観的推進ではなく、現実の制約と折り合いをつけながら進む段階に入った。社会全体が“夢を語る”よりも“足場を固める”方向へ舵を切った――これが2020年以降に見える大きな流れに見える。


2. 需要の蒸発とリソースの奪い合い

感染症による急激な需要減少は、企業にも個人にも「結果が出ない理想は贅沢品」という空気を植え付けた。

  • スタートアップは巨額の資金調達よりも、早期黒字化や資金効率を重視せざるを得なくなった。

  • 政治は壮大なビジョンより、目の前の雇用・物価・安全を示すことが票につながる。

  • 日常生活では、家計を守るために倫理的な消費より値札を選ぶ局面が増えた。

理想ではなく「ここで生き残れるか」という現実が、意思決定の最優先項目になっているケースが増えた。


3. 理想主義と現実主義の断層

若者や現役世代は、賃金や住居費といった“物理的な重力”を無視することができない。一方、資産を築いた高齢者や一部の学術・FIRE層は、生活防衛のクッションが厚く、現実の変化を肌感覚で捉えにくい。
このギャップが「理想を語る側」と「現実と殴り合う側」の相互不信を生み、SNS 上でも対立を可視化している。お互いが同じ言語を話していても、背負うリスクが違えば話は平行線のままとなる。


4. 日本の選挙が映す“現実主義の台頭”

近年の国政・地方選挙では、「生活を守る具体策」を前面に出す勢力が支持を伸ばし、理想を掲げるだけの候補は伸び悩む傾向が鮮明である。
「外国人との共生」や「急進的な脱炭素」といった長期課題ですら、費用・安全・スピードといった現実条件を示さなければ票は動かない。この選挙結果こそが、社会全体の気分をはっきり映し出している。


5. 結論――“理想”は値札付きで初めて選ばれる

理想主義は消えたわけではない。ただし、コストと時間を示したうえで「それでもやる価値があるか」を問われる時代になった。

  • 理想を進めたい側は、現実の制約を測り、負担の配分を説明しなければ支持を得られない。

  • 現実に苦しむ側は、短期の安全と中長期の発展を両立できる提案を見抜く力が求められる。

どんな壮大なビジョンも、地に足をつけて初めて実行力を持つ――それが2020年代の教訓かもしれない。

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