相対の世界に突入した

日本はついに不可逆的なインフレの世界へ突入した。

首相はいまだに「デフレ脱却道半ば」と言い放ち、日銀総裁も「安定的な2%ではない」と慎重姿勢を崩さない。

だが、これこそが「高市政権」の真骨頂だ。

あえて明言せずに、票田である高齢者に気づかれないよう、静かに、しかし確実に経済構造を書き換えている。若者にとって、これほど都合のいい政権はない。

安倍政権が着手し、高市氏が「ワイズスペンディング」という概念でアップデートしたこの戦略。その本質は、インフレを利用した世代間の富の強制移転だ。

過去30年のデフレ下では、ルールは逆だった。

現金を死蔵する高齢者が、現役世代の財布に手を突っ込み、その価値を吸い上げていた。さらに社会保険料は知らぬ間に民主主義的プロセス無しで上昇し実質的なステルス増税となっていた。生産者の手取りは削られ続けた。何も生産しない者が、ただ「持っている」だけで勝てるシステム。それがデフレ社会だった。

だが、流れは反転した。

インフレは全員に対する課税だが、そのダメージは非対称だ。

通貨供給量の増大は、タンス預金の価値を燃やし、消し炭にしてしまう。これまで積み上げられた既得権益(死蔵キャッシュ)を希釈し、その価値を生産的なセクター、つまり「今、働いている人間」や「リスクを取る人間」へ還流させる。

これは、社会への貢献度(生産性)が高い者が報われるという、当たり前の世界への回帰だ。

ここから先は「インフレフィーバー」だ。

現金の価値が溶け落ちる中で、どれだけ速く資産を回転させられるか。

我々は「相対社会(Relative World)」に放り込まれた。

絶対的な金額など意味を持たない。それぞれの生産性と資産の成長率が、インフレ率(CPI)というベンチマークを上回っているか。そのスプレッドだけが生存の条件になる。

この戦い、若者にとってはあまりに有利すぎる。

高齢者がインフレの炎に巻かれて呆然としている間に、我々はただ、その変化の波に乗ればいいのだから。


ありがとう高市さん。

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