ブルシット・ジョブと金融緩和の関係性
ある勉強会で発表を行ったのでまとめ、加筆
2012年以降行われた非伝統的金融緩和を含むアベノミクスは何故期待されたほどには効果を上げなかったのか、疑問に思ったことはないだろうか。生産力の無い怠惰な人達ではなくて、金の使い方をよくわかっている資産家に金をばらまくことによってうまく投資をしてもらい経済社会全体で良くなっていこうという概念、至極真っ当ではないだろうか?しかしそのアプローチはうまく機能しなかった。これを私は長きにわたって不思議に思っていたが、参考文献1の著者がある一定の示唆を与えてくれた。
ブルシットについて
英語圏はやはり日本とは文化が違うので日本語にその概念がない、または適切な訳語がない言葉が少なくない。参考文献1の著者はブルシットの翻訳にやや苦労したようで結局Bullshitをカタカナにしてそのまま使っている。気持ちは良くわかる。以下は日本語に直訳するのが難しい、あるいはそうすると本源的な意味が失われてしまう単語である。最近現れた概念、もしくはスラング的なものが多い。
日本語に概念が無い単語リスト
troll 常識から外れ、非誠実で適当な行為をして人を困らすこと 例:掲示板荒らし、真面目な会議の場でふざける。
instant gratification 短期的な快楽に身を任せること 「急に最高」例:ファストフード、ビデオゲーム、自慰行為 努力なしで急に最高になる。
sigma grindset お金持ちになるためや権力を得るためになんでもするような上昇志向、本質的な努力がないために多くは失敗に終わる。いわゆる意識高い系だが、金と権力に焦点が置かれている印象
bullshit 何かの目的のために適当に取り繕うようなことを言うこと
そもそもBullshitとは
出典: 英辞郎 on the WEB
https://eow.alc.co.jp/search?q=bullshit
「騙す」、「取り繕う」、「あざむき」 という要素が見受けられる。
著者によればbullshitの概念は「無意味 テキトー ウソ」参考文献1 p.55
真理が不在で、またはそれを無視して、「その場をうまく丸め込むとか、論破したとみせかけるとか、自分をなんとなくエラくみせるとか、知的にみせるとかそういうこと」参考文献1 p.58
つまりブルシットジョブとは、市場の効率性(真理)を度外視してやっている体裁を繕うための本当はどうでもいい仕事である。
ここまではふ~んあっそ。という感じだが、アベノミクスの金融緩和で、「トリクルダウン」が起きなかった理由として、金がブルシットジョブに消えた可能性が示唆されていた。
アベノミクスについて、「それは需要をつくりだすのではなく、富裕層をもっと富裕にすればいい。そうすれば、かれらは投資の仕方をよくわかっているから、「雇用創出者」としてうまくふるまうだろう。あるいは、金持ちをもっと金持ちにすれば、かれらがうまくお金を使って、景気が刺激され、産業が活性化するだろうし、そうすれば雇用も生まれるだろう、という発想」参考文献1 p.120
この雇用創出が、生産にかかわる労働者ではなく中間管理職を中心としたブルシットジョブの増殖としてあらわれるから、全体の底上げ(トリクルダウン)としては現れなかった。
この説明が、現実をよくあらわしていると感じた。
金持ちをもっと金持ちにしてうまく金を回してもらうというのは理論上完璧に思えたが現実には予測されたほどには効果が上がっていない(長期的にはわからないが)、その理由についてずっと色々考えていたがまさかここでそれを説明する説にあたるとは思わなかった。
人間を多く使うことによって中間管理職を増やし資源をより効率的に使うことができるようになったが、実際に生産に関わる労働が活性化したわけではないので富の総量は増えていないのではないかという見方がここからできる。
経済を活性化するために1次エネルギーをもっと掘り出す、手に入れる、または太陽から直接抽出するという方法を取る私の理論を支持する側面がこれにはある。
2022年3月12日 Lulutaso総合研究所 主席研究員 Hasetaso
参考文献 :
1.ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるのか
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